vol.2:ローライフレックス2.8F

近頃ローライの旧い二眼レフが人気らしい。特に女の子に人気のようで、写真学生ぽっいのが町でぶら下げているのをよく見かける。若い写真家がネガカラーでプリントした作品を発表しているのも多い。「使うローライ」なんて本だれが買うのかと思っていたら、けっこう売れたという。とうとうメーカーも現行型の2.8GXの外装を旧いモデルのように変えたものを作ってしまった。でもやっぱり旧いやつのほうがカッコイイ。

 


もし世界一周の旅に出るのなら、持っていくカメラはローライになる。電池もいらないし交換レンズも付かないから80ミリ一本。露出計はついているからせいぜい接写レンズのプロクサーを持って行くくらい。あとはフィルムだけだから、これなら小さいバックひとつですんでしまう。

島の旅もほとんどがローライだった。正方形のフレームはその場をそっと切り取る感じで縦横の重力が均等なのがいい。35ミリの特に縦位置のフレームはちょっと暴力的な感じがする。そのせいか近頃は35ミリは横位置で撮ることが多い。

初めて買ったのはもう10年前、1991年の5月。5月は税金の還付があるのでちょっと余裕がある月なのだ。銀一カメラでクセノタール付2,8Fの12/24切り替え付き最終型を見つけた。ピカピカでオーバーホールの伝票がちゃんと付いて25万円だった。その時はプラナーのレンズ付きはなかった。当時は今のようにたくさん物がなかったように思う。

テストフィルムを入れて動作を確認すると、早速仕事でポートレートに使ってみた。チャッ、スル(巻き上げ)、チャッ、スルとテンポがいい。いつもと違いゆっくりと撮影できる。ポートレートにモータードライブは似合わないと実感できた。カラーネガをプリントしてみると、これまでに見たことのない柔らかいトーンが出ている。

もうこうなると後戻りはできない。翌週もう一度銀一カメラに出向き、プラナー付きの2,8Fを26万円で手に入れた。それから3年以上ほとんどのポートレートを2台のローライで撮った。

よくプラナーとクセノタールの違いを口にするひとがいるけれど、2台で同じものを撮ってプリントした結果から言えばどっちで撮ったかをわかるひとはいない。ただハッセルの現行CFプラナーとはさすがに大きく違い、コントラスト、カラーバランス、シャープネスすべてにおいてハッセルのレンズは素晴らしい。プリントをしていても少ない枚数でOKプリントが出来上がる。そのせいか近頃、仕事の写真はハッセルを使うことがほとんどとなった。これはコーティングの善し悪しなのかもしれない。

しかし旧いローライがダメなのかといえばそんなことはない。丁寧にプリントを重ねると、溢れるようにトーンが出てくる。だから出来上がったプリントはもうかけがいのないものになってしまう。

クセノタール付きのローライは、以前にいたアシスタントのもとに譲ってしまいのこるは一台だけになってしまった。今、ローライで欲しいのはプラチナモデルのローライ。ぱっと見には普通のモデルと変わらないがどこか高級感が漂う。しかしそんな外見で欲しいのではない。プラチナモデルには旧いタイプのレンズに最新のコーティングが施して有る。いったいどんな写りがするというのだろう!それが銀座レモン社の委託品に出ている(2001、4月現在)。59万円。いったい高いのだろうか安いののだろうか?