vol.6:暗室1 伸ばし機

 広さ約12畳、幹線道路に面した古いビルの2階に僕の暗室がある。

 撮影機材が置いてあるものの、暗室優先のため、窓は段ボールと暗幕で完全に目貼りがしてあり、昼夜を問わずプリントをすることができる。流しの部分は取り外してもらい、合羽橋の問屋街で、業務用の幅120cm、奥行き60cmのステンレスのシンクを5万円で買ってきて取り付けた。写真用ではないために、現像液による腐食が激しく、使用後の手入れがかかせない。換気は、換気扇に東急ハンズで買ったダクトを取り付けてあり、遮光しながらの空気の入れ替えを可能にしている。長い時間こもることもあるために、過ごしやすい様にレイアウトした。一番よい場所が引き伸し機の前で、次がi−MACの前となっている。作業中は音を鳴らさないが、CDラジカセとテレビデオもそろっている。もう7年になるがここが僕のお城である。

 伸ばし機は、4×5インチから6×6センチまでがラッキー45MC、35ミリがライカのフォコマート35VCで、ともにカラーに対応。レンズはニコンの80ミリと135ミリ、フォコターの40ミリとなる。フォコマートはまだライカのカメラを持つ以前から使っている。伸ばし機を購入する際、当時35ミリの撮影が多かった僕に「35ミリを伸ばすことが多ければ35ミリ専用機のフォコマートが一番。将来4×5の伸ばし機まで考えていても絶対損にはならない」というアドバイスをもらったせいだ。この忠告はとても正しかった。数年後ラッキーを購入、専用機同士の使い勝手はとてもいい。

 しかしフォコマートは1999年に突然生産を中止してしまい、今後のメンテナンスに若干不安を残すこととなった。これまでで一番困ったのはヒューズがとんだ時で、ドイツ製の特殊な使用のそれは日本ではなかなか手に入らず、デモ機のものを抜いて売ってもらい、数本をドイツに注文して事なきを得た。ヒュ−ズ1本でプリントが出来なくなるのではないかとヒヤヒヤものだった。現在中古でたまに見かけるが、使い込んだ品でも当時の売り値より高い30万円の値札がついていた。買ったのは1988年、レモン社の平行輸入品で25万円くらいだったと思う。カメラもそうだが現行品のときはほとんど相手にされなかったのに発売中止となるととたんに人気がでてくる。まあライカブームの影響もあるのだろうけど。

 この白い塗装のスタイリッシュなデザインのV35は23年前、1978年には日本で発売されており当時のカメラ雑誌に使用レポートが載っていてる。散光式のV35とそれまでの集散光式の1cや2cとを比べ、散光式は傷やホコリがこんなにめだちませんとやっていた憶えがある。新聞社にいた頃、朝日新聞社の暗室で1cや2cを使ったことがあるが、V35のほうが動きが断然滑らかで倍率を変えるのにもほとんど力がいらない。ただモノクロを焼くのなら2cだと個展の時にお世話になったプリンターが力説していた。

 2c、気にはなるのだがもう暗室に置き場所はない。