vol.7:カラープリント

人と違ったことがしたいということと、カラーポジになじめなかったこともあって、10年以上も前からカラープリントで仕事をしてきた。初めは印刷所が慣れていなくて、なかなかいい印刷が上がってこなかったが、近ごろはほぼプリントに近い上がりになってきた。納品の90%がカラープリントという年もあったが、カラーポジ、特にフジの400RHPの登場とともにカラープリントの割合が少なくなってきた。それでも独特の柔らかいトーンはプリントならではのもので、近ごろでは雑誌「東京人」7月号、小特集のポートレートで使っている。「初夏のイメージで」というオーダーに、プリントの柔らかさはピッタリだった。

 フィルムはコダックの400ネガから始まって、アグファのウルトラ50、コニカのインプレッサ50、同3200、コダックVPH、と使ってきたが今はフジ400プロに落ち着いている。このフィルムは簡単に言えばフジのフォトラマ(そう言えばフジフィルムの撮影で「ポラロイドチェックして下さい」と現場で大声を上げてひんしゅくを買ったことがある。フジはフォトラマなのだ。)と同じトーンのプリントが焼ける。それに蛍光灯のグリーンかぶりも少なく感度も400あることから、余計なライトを立てることなく、現場の雰囲気をそのまま表現できる。それをコダックのスープラの滑面かポートラの微粒面の四つ切りにプリントする。シャープなイメージはスープラに、柔らかいポートレートなどはポートラにと使い分ける。アメリカにはスープラの上にウルトラという高いコントラストの印画紙があるが、日本ではまだ安定供給できていない。たまに銀一とか原宿のナショナルフォートに置いてあるのを見かけるがまだ使ったことはない。ためしに使ってよかったらインターネットでアメリカに注文という手もある。

 プロセッサーはラッキーのCP31が2台。一台は伸ばし機の後ろ、部屋の中央に。もう1台は流しの横に設置してある。2台もあるのは故障の場合の予備とラフプリントなどモノクロで使う場合も多いからだ。CP31が発売されたことでカラーの自家プリントが可能になり、多くの写真家、特にファッション写真の世界は大きく変わったように思う。

 カラープリントはモノクロと違って近い将来デジタルにすべて変わっていく。モノクロの数十倍の劇薬の廃液が、環境を汚染する問題は避けては通れないからだ。とうとうコンパクトカメラの売り上げがこれまでの銀塩カメラを追い抜いた。町のDP屋さんも数は少なくなって、スタイルもデジタルに対応していくだろう。新聞社からは暗室が消えた。すべて明るい部屋での作業となった。昔、新聞社の小僧だったころ、写真が思うように撮れず小さなフィルム暗室で悔し涙を流したことがある。いまの新人はどこで泣くのだろう。