vol.9:オリジナルプリント1 ウィリアムクライン

ひょんなことから3人の写真家のオリジナルプリントを手にいれた。ウィリアムクライン、森山大道、田中長徳。そのいずれもがニューヨークをモチーフとしている。
 正確にはウィリアムクラインのものは作家の一点物のオリジナルプリントではなく、全部で80部作られたポートフォリオボックス。
 1996年制作で「CITIZEN SIDEL」とタイトルが付けられ、二つ折りの薄手の台紙8部、全24ページに6点の写真がドライマウントされている。台紙には英文と仏文のテキストがつけられ、ポートフォリオ写真集の体裁になっている。
 クラインとフランスの作家JEROME CHARYNの、NYを舞台とした短編小説とのコラボレーション。警察の汚職をあばくというストーリーにクラインの写真を合わせている。撮り下ろしではなくストーリーに沿って今までのクラインのNYの写真を使っているようだ。
 エディションは22/80となっていて、縦30センチ横40センチの黒いボックスに納められている。サインは写真ごとに台紙に入れてあり、奥付にも作家JEROMEと共にサインが入れてある。

 一折一折りに
「MADISONSQUAREGARDEN」
「7thavenue」
「BrooklynBridge」
「PoplarStreet」
「NYUElizabethstreet」
「NYPD」
「lowerMan]
とタイトルがつけられており、写真は機動隊、街の群集、ハロウィンの仮装パーティ、ゴミとして束ねられた新聞、料理教室、エンパイアステートビルのシルエットと続く。 
 始めて見た時は6点全て額装してあり、シリーズ物とは思えなかった。その中のビルのシルエットの写真に強く魅かれ、サインを見てウィリアムクラインと知った。モールコレクションとして展示してあったので見た人もいるかもしれない。それがポートフォリオボックスの形をとると途端に魅力を増した、超高級な写真集となる。
 小説の内容はあまりたいしたことはない。しかし、英文と仏文の入ったデザインはカッコよく、装丁の良さが目を引く。いったいどういった目的で作られたのだろう。
 額に飾るのもいいが、これはひっそりとボックスを開いて、こっそりと写真を見るのがいい。でもいつも寝かせておくのももったいないし、悩みどころだ。ビルのシルエットの写真だけでも飾りたいのだが、そうするとクラインの写真が映えるように部屋を変えたくなる。
 自分でもこんなポートフォリオ集を作ってみようかと思ってしまう。モールで販売している伊東時男さんの「FRAGMENT」もポートフォリオ形式の写真集で、とても美しいと聞く。30部限定で24枚の写真が納められたこのポートフォリオは、35000円の値が付けられていた。これはオリジナルプリント1枚分の値段でしかない。こう書いていたらなんか欲しくなってきた。

 だれかこのクラインのポートフォリオについて知っている人がいたら教えてください。