vol.36:ギャラ

いったい他のカメラマンはどのくらい稼いでいるのだろう。年商(年収)はお互いタブーのところがあるからよくは分からない。しかし酒の肴にお金の話しは付きもの。あそこのギャラ(撮影料)は高いだの安いだの、誰それはクルーザーを買ったの、スタジオを建てたの、という話に必ずなる。


稼いでいる友人(個人事務所)で年商4〜5千万。他の商売と比べたらたいした事はない。でもこれはプロダクションを経営して、社員を使って稼ぎ出したものではなく、純粋に個人のカメラマンに支払われた撮影料と言うことを忘れてはならない。

仮に、年商4千万として、月割りで333万円。1ヶ月20本の撮影があったとしたら(どんなに売れっ子でも1ヶ月の撮影本数はこんなもの)1回の撮影料は16万5千円。

アレッこんなものか。でもフリーのカメラマンがコンスタントに仕事を入れるのは大変。そういえば大手撮影プロダクションに勤めている友人の、昨年彼個人が担当した撮影の売り上げは、やはり4千5百万円だったと聞いた。彼は年棒制の契約なので会社から売り上げを教えてもらっている。プロダクションが営業を使い、仕事を入れてもやはりこのくらい。年商5千万円がひとつの壁となっているのだろうか?ほとんどのフリーはせいぜい1千万円から3千万円の間。もちろん年齢が上がったからといって年収が上がるわけではない。

なかには某広告代理店の写真部を辞め、フリーになったその年の売り上げが2億円と言う人もいたと聞く。月で割って1600万円。1本あたり80万円以上。グレートである。

雑誌の撮影料は1ページあたり1万5千円(専門誌)から5万円(週刊総合誌)まで。広告のタイアップはだいたいその2倍。表紙は10万円前後というのが相場。雑誌の場合、材料費は別払いとなる。


広告はピンキリだろうが、撮影1点、5万円くらいから。ポスターは20万円くらい?新聞広告は全国紙で1段10万円。15段全面だと150万円ということになるが、なかなかそうはいかない。広告の場合、広告年鑑というのが出ていて一応それに準ずることになっている。

CDジャケットは、新人アーティストの場合、15万円で材料費は込みということが多かった。ポスター、パンフなどは、ジャケット写真から流用されてしまう。100万枚セールスを見込めるビックアーティストになると、ジャケットで100万円。ポスターその他は使った分だけ別払い、ということになる。ちょっとは夢が出てきたか?

レンタルポジは一時大流行して、写真を預けるカメラマンも多くなった。昔のような、いかにもレンタル用といった写真から、イメージ写真寄りになってきたせいだ。これを副収入としているカメラマンも多く、知り合いでも毎月コンスタントに20万円以上の金額が振り込まれる者もいる。


撮影料は多分20年前とたいして変わっていない。むしろ安くなっているかもしれない。昔、写真撮影は特別の秘儀だったからカメラマンは尊敬を受け、結構なお金をいただいていたのだ。


40年前、新入社員の月給が1万円ちょっとのときに、総合月刊誌のグラビアを10ページやると諸経費込みで50万円ほど貰えたらしい。1ヶ月で撮影して半年暮らせたと聞いた。テレビが普及する前は雑誌の情報こそが全てという時代があった。


驚くことに「…カメラ」という類の写真雑誌で、連載ページがあると食べていけたというのだ。今の掲載料は、1ページ1万円くらいだと記憶する。とてもじゃないが材料費だけで足が出てしまう。


広告にしても相場というのが確立していないから、1本撮影すると1ヶ月事務所が維持できたらしい。


今60歳くらいのカメラマンは、こういった夢のような話しを遠い目をして語るのだ。



カメラマンはあんまり儲からない商売だとばれたのか、なり手が少なくなったらしい。専門の勉強を受けても、職業カメラマンになろうとしないと学校の先生がこぼしていた。



競争相手が少ないに越したことはないが、なんともさみしい話しではある。