vol.40:日々

10月29日
先週に続いて「東京人」12月号の小特集「丸の内」の撮影が2件。イラストレーター茂元ヒデキチ氏
(http://www08.u-page.so-net.ne.jp/gd5/hidekich/)
をMARUNOUTI CAFEで撮影。夜、八重洲グリルでジャズライブの撮影。「東京人」の仕事は大変だけれど楽しい。雑誌における写真と文章のバランスがとてもいいからだ。写真が主でも従でもない。


10月30日

朝10時から事務所で暗室作業。仕事用ではなくNYで撮ってきたものを11×14インチのバライタ紙に焼き付ける。このHPのフォトギャラリーに載せているものの再プリント。来年の4月末に神楽坂の「あゆみギャラリー」で写真展の予定だ。NY、パリの写真に写真集「午後の最後の日射」のオリジナルを展示するつもり。もう生産中止になった印画紙「エクタルア」を使う。残りは100枚程度になってしまった。アシスタントWと流れ作業。しかし1点につき10枚ほど焼くので1日4〜5枚が限度。プリントしているとあっという間に時間が過ぎる。午後3時半に遅い昼食。7時過ぎ終了。仕事以外のプリントを夜には焼かない。夜、調子にのってプリントしたものを朝見るとがっかりすることが多いせいだ。


10月31日
車雑誌Naviの撮影。朝10時に都筑インターを降りたマックに集合。スバルのタイアップ用のページ。今回で3回目。スバル車のオーナーを紹介する2ページ。写真は断ち切り(1ページ全面)で使用。どんな人が出てくるのかと思ったらレガシィB4に乗るチョーラブラブなカップルが登場。あまりのラブラブぶりに目が点。インタビューをしている間にロケ場所を決めてセッティング。4×5インチのカメラに90ミリのレンズ。撮影中も2人はしっかり手を握り締めていた。堀内カラーに現像を入れるとその足で「東京人」編集部にいままでの上がりを納品。ページ構成で足りない部分が出てきたので丸の内に撮影に行く。綺麗な夕焼け。東京駅前の行幸通りで撮影していると警官が2人自転車で飛んで来た。「ここは天皇家専用通りだから撮影はまかりならぬ」とのお達しを受け即退却。ポラ切っている間に撮ればよかった。日没まで撮影。帰り道ヨドバシカメラでフィルムの仕入れ。この頃減りが速い。堀内カラーで現像入れと朝のNaviのテスト現像分の確認。本番もテスト同様プラス3分の1増感。結局昼飯は食えず。夜、妻の帰りも遅かったので家族で焼肉屋へ。ガラーンとしている。以前は繁盛していた店だったのに騒ぎの後ぱったりと客足が途絶えたと言っていた。

11月1日
もう今年も残りわずか。丸の内中通りでエッセイスト有吉玉晴さんの撮影。ハッセルに80ミリ付き。次の撮影時間まで間があるのでNaviに昨日の写真を納品。ラブラブな関係がバッチリ写っていて大うけ。よかった! 午後3時半、新丸ビルの屋上から東京駅を望む風景を撮影。あいにく雲がでて夕焼けがいまひとつ美しくない。ちょっとした雲の切れ間から差す光を待つ。じりじりとするがしょうがない。今は祈るだけ。4時半をまわったところで一瞬だけ日が差した。にわかにあわただしく撮影を始める。4×5インチのカメラの撮影は餅つきに似ている。アシスタントと手際よくペッタンペッタンとリズム良く撮影するのがベスト。優雅にカシャッというわけにはいかない。汗が吹き出るくらいくらいの勢いで撮る。それでもまだいまひとつ気に入らない。ビルの立会いの人の顔を窺いながら日没を待つ。5時ちょっと前、日が完全に沈み、東京駅に明りが灯る。一瞬間をおいて空がピンク色に染まった。ここぞとばかりシャッターを切る。しかし1枚目、2枚目、3枚目とホルダーを差し替えていくと、ピンク色の空は鉛色に変わってしまった。その間わずか1分弱。最後にポラを切って終了。久々の充実感を味わう。


11月2日
朝配達された現像の上がりを目をこすりながら確認。1枚2枚と見ていくがいまひとつ。最後の2枚というところで空がピンク色に染まった東京駅夕景が出てきた。美しい。OKだ。アシスタントWはカメラマンとして撮影に出ているため今日は一人。Wは今回で2回目の一人での撮影。前回あまり思わしくなかっただけに今回は気合が入っている。「東京人」最後の撮影に丸の内へ。大体のあたりはつけてあったのでスムーズにいく。一人で4×5インチの撮影だがワイドエボニーに90ミリ付きだから楽。三脚はハスキーで十分。いろいろとカメラに改造をしてある。もしかしたらキャノンEOS1のモーター付より軽いかもしれない。京橋の堀内カラーに現像出し。今晩納品のためテスト現像なしの総流し。現像が上がるまでの2時間、銀座のカメラ屋巡り。お決まりの銀一、レモン社。この間もレモン社で90ミリの大判レンズを買った。コンゴーという山崎光学が作った大判用としてはとってもコンパクトなレンズ。現在の愛用品。1万1千円だったがよく写る。こういう買い物大好き。結局今日はなにも買わず。堀内で仕上がりを受け取ると芝浦のPGI(フォトギャラリーインターナショナル:
http://www.pgi.ac/gallery/current/index.html
に普後均写真展のオープニングへ行く。普後さんとは直接面識はないものの、普後さんのお兄さんが僕の故郷で写真館を営んでいて、高校生の頃にとてもお世話になった。そのお兄さんからよく普後均さんの話を聞いていたのだ。一度お会いしたいと思っていたが、チャンスが無かった。今回のオープニングの招待状がどういうわけか僕に届いたため(お兄さんが手配してくれたようだ)行ってみることにしたのだ。ところが会場に着いたら知っている顔が一人もいない。誰か知っているだろうと高をくくっていたのだが、あまかった。普後さんの顔すら知らないのだ。普後さんと思われる人の周りをウロウロするがあっちこっちでつかまっていてタイミングがとれない。泣きそうになっていたところに知り合いのディレクター登場。助かった。無事普後さんを紹介してもらうことが出来た。残念ながら普後さんとは5分ほどしか話せなかったが、会場に来ていた写真家の石内都さんと話をすることができた。僕にとっては女優さんと会うより嬉しい。今やられている写真展の案内状をもらう。細江英興氏の顔も見えた。8時デザイン事務所で「東京人」編集者と待ち合わせ。副編を交えて4人でレイアウト組み。通常雑誌の撮影は編集者に納品で終わりだが「東京人」では最後まで立ち会うことが出来る。11時過ぎまでああでもない、こうでもないと作業を進める。編集者と遅い夕食。12時前ようやく帰宅。


11月2日
朝から雨。今日は撮影も納品もプリントもなし。完全な休日。妻娘は実家に行ったため久しぶりに一人の休日。母校日芸の芸術祭を見に行く。毎年欠かさず学生の写真展を見ている。風景ありポートレートあり佐内ふうあり蜷川ふうあり、多彩な写真が一堂に集まっている。玉石混交の中、毎年3人「こいつはスゴイ」と思えるものに出会う。2人だったり5人だったりすることは無くていつも3人。今年も8×10インチサイズのピンポールカメラで撮った写真を1.5メートル×3メートルにプリントしたもの。写真棟の玄関前にドーンと展示してあったがとにかく目を引いた。小品ながらとても美しい4×5インチカメラの密着焼きの作品。女性の作者だった。圧巻はエスキモーの村のドキュメント。ストーリーも素晴らしかったが、プリントが恐ろしく綺麗だった。はっきり言って頭抜けていた。来年文藝春秋社に入社するというが1年目から活躍することだろう。クオリティの高さに本当に驚いた。昼、言うのも憚られるほどの豪華な食事。マッサージを受けに行き身体を軽くする。夜おいしい焼き鳥やで1杯。飲みながら月曜日の撮影のプランを練る。機材の選択や撮影方法をずっと考える。一番幸せな時。


11月3日
今日は渋谷東急で「デジカメで撮るテディベア」の講師役。朝10時に会場入り。人が全然集まらなかったらしく、わずか受講者は5人だけ。まあ少ない分、やりやすくはなった。このワークショップは、「自分が作ったテディベアを、デジカメを使ってかっこよく撮る」のが目的。デジカメの接写が出来る機能を活かして撮る。内蔵のストロボは使わないで、卓上用の蛍光灯2つでライティング。簡単なライティングだがこれが効果絶大。座学の後に受講生皆で実際に撮ってみる。2時間はあっという間。皆さんには楽しんでもらえたようだ。東急の上で昼食後、自由が丘のカメラマンの友人の家に遊びに行く。最新式のMAC(ハードディスク90ギガにメモリー1,3ギガっていったいなにに使うんだよ?)にニコンのフィルムスキャナー(ブローニーサイズまで読み込めるやつ)があった。プリントアウトしたものを見ると欲しくなる。でも全部で200万円コースだ。夜、皆で焼肉屋へ。結構込んでいた。でも隣の回転すし屋は人で溢れてすごいことになっていた。食べながら担当編集者の話で盛り上がる。10時半帰宅。明日の撮影は午後からNaviのロケ。天気予報は雨となっている。心配だ。どうか明日雨が降りませんように。