vol.41:デジカメからプリント

vol.40「日々」で書きましたが、コンパクトデジタルカメラを使った写真講座の講師をやりました。そこでコンパクトデジカメに対する認識をあらたにすることができました。


デジカメはプロ用のゴツイのではなく、フジのファインピックス4500(vol.18参照)を使っています。胸ポケットにも収まるサイズなので日常の記録用としていつも持ち歩いています。フィルム代や現像代を気にしなくていいので、手当たりしだいなんでも撮っています。


さて、デジカメを使っている人は知っていると思いますが、通常のカメラに比べてデジカメはいろいろと設定をしなければなりません。たいていはオートの位置でいいのですが、問題なのがピクセルとクオリティーの設定というやつです。記録サイズと圧縮率のことで、これは画質に大きく影響してきます(と、どの本にも書いてあります)。


ファインピックス4500の場合、640ピクセル・1280ピクセルのFINEとNORML・2400ピクセルのFINEとNORMLとBASICの6段階から選択しなければなりません。


イメージとして、640ピクセルよりも2400ピクセルのほうが、BASICよりFINEのほうがきれいそうだということはわかります。ただ、どのくらいを設定しておけばいいのかはピンときません。


一番いいピクセルにしておけば撮影後にリサイズ(より小さなピクセル数)できるから、大きければ大きいほどいいかというと、撮影枚数も減るし記録や転送に時間がかかってしまいます。


ちなみにファインピックス4500に付属している16メガバイトのスマートメディア(記録媒体。デジカメにおけるフィルムのようなもの)で撮影すると640ピクセルで165枚撮影できるのに対して、2400ピクセルのFAINだとわずか9枚しか撮ることができません。


いまファインピックスの説明書を読んだところ「プリントをきれいに仕上げるには出来るだけ大きな画像サイズを使用します。3種類のピクセルと3種類のクオリィティーの組み合わせから目的に応じた設定をしてください。」とサラッとふれているだけです。


自分のインクジェットプリンター(エプソンのPM3000Cと720C)で出力してみたところ、よほど条件がそろわない限りどのピクセル数であろうがクオリティーであろうが、うまくプリントできません。トーンジャンプ(トーンがなだらかに再現できない現象)がハデに起こり、色も画面で見たものとはかけ離れています。とくに、簡単写真モードを使うと最悪です。CMで優香が言っているようにはできません。


お店にディスプレーされている出力見本は、「もとの画像データが完璧なものになっている」と聞いたことがあります。


コンパクトデジカメからはインクジェットプリントは難しい。勝手にそう解釈してデジカメはパソコンやテレビの画面で楽しむことにしました。モニター上に写る画像は美しく、わざわざプリントするまでもないほどです。ピクセルは640で十分。メールやHPの画像の添付にも大きすぎるくらいのサイズです。プリントにするにはいままでの銀塩フィルム(ようするに普通のネガカラー)、画面上ではデジカメ、と住み分けるのが一番いいと考えるようになりました。


ところが今回デジカメの講座をやるにあたり、ためしにコンパクトデジカメのプリントを町の写真屋さんに頼んでみることに。あまり利用されていませんがほとんどのメーカーのデジカメの記録メディア(スマートメディアやコンパクトフラッシュなど)から通常のサービス版や2L版にプリントしてくれます。いわゆる銀塩プリントです。


家の食卓にテディベアを置き、2つの卓上蛍光灯を使った簡単なライティングで3種類のピクセルと3種類のクオリティーで計6枚を同じアングルで撮ってみたものを2L判にプリントしてもらいました。写真屋さんの店頭ではできないため工場に持っていくとかで、仕上がりに中1日の時間がかかりました。


結果は… 640ピクセルで撮ったものは若干のザラツキがあり「いかにもデジカメで撮りました」、という画像でしたが、他の5枚にはまったく差を見つけることができませんでした。写真に番号を書いておかなければ、写真をピクセルとクオリティーの高い順に並べるのは不可能です。640ピクセルでさえ言われてみればというレベルです。


そして5枚のクオリティーの高さには目を見張るものがあります。テディベアの毛の柔らかさ1本1本まで描き出し、素材感がはっきりと伝わってきます。色味は派手になることなく落ち着いた、しかも忠実な色味が出ています。デジカメのモニターで見たものと比べて違和感はまったくありません。モニター上で確認したようにプリントできる。これはとても大事なことです。



結論として1280ピクセルのノーマルモードの設定で十分でした。なぜなら2L判以上まで伸ばすことなどないといっていいからです。


使ったライトは卓上蛍光灯のみ。手持ちでの撮影です。普通のコンパクトカメラでは絶対に撮ることができません。なぜなら対象にこんなにも近寄れないからです。寄れないことがコンパクトカメラの最大の欠点といえます。デジカメはこの問題をクリアしています。しかもモニター上で仕上がり予測が出来る。



今回撮影したクオリティーを銀塩カメラで再現するためには、1眼レフにマクロレンズ、三脚を使ってかなり大掛かりな撮影になってしまいます。ほとんどの人には無理な話です。


1眼レフにマクロレンズに三脚使用と同じものか、あるいはそれ以上の写真がコンパクトデジカメで撮れてしまう。これにはショックでした。今回の写真は、はっきり言って雑誌の原稿に十分耐えることができます。カラープリントを自分で焼いて写真原稿を作っている私が断言します。


デジカメで撮って銀塩プリントに焼く。もしかしたら大変な発見をしたかもしれないと自分では思っています。今後、コンパクトデジカメを仕事で使おうと本気で考えています。


メインのカットはハッセルで、サブのカットはデジカメで。本気です。


くれぐれも編集者のかたは、現場で渡部がポケットからデジカメを取り出したからといって驚かないで下さい。