vol.46:なぜモノクロ?

家に帰るとメールとHPをチェックするのが日課なのだけれど、ある日カウンターがとんでもない数に増えているのに気がついた。グルグルと回っている感じだ。今まで一日20人程度だったのが400人を超している。「何事」と思ったらオープン半年にしてようやくYAHOOに登録されたことがわかった。


しかし、名前が「渡辺さとる」で登録されている。「渡部さとる」が正解!即、訂正依頼を出した。




YAHOOからここに来られた方に。コラムは毎週日曜日に書いているので、だいたい火曜日の朝に更新予定です。コラムが100になるくらいまでは続けるつもり。基本的に写真に関することで書いていきます。でもそろそろネタ切れ。


リンクはフリーです。ただしこのサイトにはリンクのページはありませんので相互リンクはできません。写真に関するサイトはコラム内で紹介しています。


このサイトは写真集の販売を目的に始めたのに、いつのまにか写真ではなくコラムがメインとなってしまいました。たまにはギャラリーのほうも見てくださいね。もちろん写真集もここから買うことができます。




仕事プリントの整理をしていたら、あらためてモノクロ写真が多いのに気がついた。「モノクロで」という撮影依頼以外にも、ページを任された撮影の場合、カラー写真がメインだとしても必ずといっていいくらいモノクロを入れて構成している。


「どうしてモノクロなのですか?」


昨年写真集を出したときに著者インタビューを受けると必ず聞かれた質問。南の島に行ってわざわざモノクロ。「なぜ?」


島はどこも透き通るような空気で、色がみな美しい。底が透けて見えるような海や真っ白な入道雲、カラフルなビーチ沿いの建物などカラー写真にはうってつけのはず、と誰もが思う。


質問を受けて初めて「なんでモノクロなんだ」と自問してみた。写真を16歳の頃から始めて以来、大学時代も新聞社に入ってからも写真とはモノクロだとずっと思ってきた。


写真集を買っても写真展を見ても、モノクロ写真に惹かれてしまう。頭がモノクロであることに何の抵抗も示さない。人は通常、視覚情報を形と色で認識しているが、毎日毎日写真を撮ってプリントして、という作業を10年も続けると、「色」という情報を「トーン(階調)」に置き換えて見ることができるようになる。


いうまでもなくモノクロ写真はトーンのみで構成されている。「トーン」が見えるようになるということは、取りも直さず「美しいトーン」が見えてくるということになる。


それ故、「美しいトーン」の場所をモノクロフィルムで撮れば「美しいモノクロプリント」が出来上がるということになる。モノクロ写真というと、とかく「フィルム現像が」「プリントの焼きこみが」という話に終始しがちだが、「トーン」を感じることが先決のような気がする。


カラー写真は「色」というポイントが大切になる。色を「点」として捉える。モノクロはトーンの「連続性」。真っ赤な薔薇をひとつ撮るにしても、カラーであればバックの色との相性を考え薔薇色が引き立つようにライティングを考える。しかしそのセットのままでモノクロ写真を撮ろうとすると、うす黒いグレーの薔薇しか写らない。モノクロで撮るなら、薔薇の花びらひとつひとつに「トーン」を持たせたライティングでなければ薔薇は薔薇として写らない。


フリーになったばかりの頃、「カラーとモノクロではライティングを変えなければならない」という話を聞いた。頭ではなんとなくわかるのだが、具体的にどうすればいいかわからない。そこでスタジオでのタレント撮影がしばらく続いた時に、カラーポジとモノクロの両方を、セットを変えずに撮ってみることにした。


毎回タレントごとにライティングを変えて撮影したのだが、確かに「カラー」がいいと感じるときは「モノクロ」はいまひとつで、「モノクロ」がうまくプリントできたときは「カラー」はパッとしなかった。



しだいにカラーはポイントで構成するものでモノクロはトーンで作り上げるものだということに気がついた。それによって「シャドーのおこし」ひとつでもレフ版がいいのかライトをもう一灯焚くのがいいのか判断できるようになってきた。




南の島の旅を続けていた頃は、物事を「トーン」で見ることしかできなかった。その感じ方が当たり前だと思っていたために、自分で撮ったポジの写真を見ると妙な違和感を感じてしまう。モノクロに焼き付けるのが撮影したときの雰囲気に一番近かった。


だから南の島をモノクロで撮ることにはなんの抵抗もなかった。青い海だろうが白い雲だろうが物事を「トーン」でしか見ていないのだからカラー写真に興味が湧くわけもない。


これが「なぜモノクロなのですか?」という質問の答えになる。




ところが最近、やたらと「色」が見えてきた。カラーもネガカラープリントは一時期随分はまったが、今の気分はポジだ。あれほど許せなかったポジの発色がとても気に入っている。


今個人的に撮っている題材は「東京」。それも皆が知っている「東京」。「こんなところ知らなかったでしょう」的写真ではなく、誰もが見ている東京。シノゴのカメラに90ミリのレンズを付けて撮っている。フィルムはフジのRDP3というポジフィルム。東京のランドスケープをキリキリと描写してくれています。