vol.48:あけましておめでとうございます

「更新が12月で止まっているけれどどうしたの?今年はやらないの?」とのメール。

今年ははりきって元旦夜から更新のつもりでした。

が、このサイトの管理人が十二指腸潰瘍で1日に緊急入院。元データがこちらには無いし、あったところで更新のしかたなど分からず、途方にくれたのでした。

ようやく管理人が退院したので元旦に予定していたご挨拶をアップします。

今年はこれで年賀状のかわりにしようと思っていたので、だれにも出していません。年賀状を送っていただいた皆様、ありがとうございます。これにて年賀状の代わりとさせてください。

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あけましておめでとうございます。


年明け早々からこのコラムを見てもらえたこと、とても感謝しています。昨年6月から始めて半年、いろいろな人に「見てるよ」と声を掛けてもらいました。


作った当初は更新を重ねる自信はありませんでした。しかし書いていくうちにペースがつかめ、コラムは50近くにまで増えました。肝心の写真はまだ少ないのですが。100のコラムと10のギャラリーを目指して今年も続けて行きます。




「よくそんなに写真のことだけで書けるね」と感心されますが、町工場のオヤジが「ネジ」について一晩しゃべり続けられるのと一緒です。365日、朝から晩まで布団に入ってからまでも写真のことを考え続けています。写真のことが頭から離れるのは、体を動かしているときか、おいしいものを食べているときぐらいなものです。


別に「そうあらねばならぬ」と思っているわけではなく、ただ写真が好きなだけなのです。好きなことを一年中考えていられて、好きなことをやって皆に喜んでもらえるのは幸せ以外の何ものでもありません。




いいことばかりでもありませんでした。昨年は始めて「不況なんだな」と実感しました。雑誌が好きで表紙を含めてグラビアで仕事をしています。今までは世の中が不況だ不況だと言っていても、こと雑誌に関してはいい写真を撮ってさえいれば全てが許されるところがありました。しかし昨年からは「コスト」というものを意識せざるを得ません。


写真集の版元であった「モール」の倒産、2年間表紙を担当していた「モバイルアイ」の休刊。三國連太郎、美輪明宏、喜多郎などシブイ人を撮らせてくれた「おとなぴあ」も一時休刊。出版不況はまだ今年も続きそうです。




だからといって今までの手間を掛けた仕事のやりかたを変える気にはなれません。自分を必要としてくれる人のために今年も頑張っていきます。また必要としてくれる人が一人でも多く増えればこんなに嬉しいことはありません。





今年41歳。厄年です。


10歳の夏休み、盆踊りのスピーカーからは「あと、さんじゅうね〜んで、にじゅういっせいき〜」と流れていました。三波春夫が歌っていた「21世紀音頭」です。


「30年後、21世紀になる頃40歳か」 子ども心に40歳という年齢には圧倒的な絶望感を抱いていました。イメージは「ハゲて腹の出た、生活に疲れたおじさん」です。想像していた21世紀は「空中都市」に、「銀色のテカテカの服」、「錠剤になったゴハン」です。その生活におじさんは似つかわしくはありません。


21世紀になっても「空中都市」は実現しませんでした。けれども、僕自身は少々腹は出てきたものの、生活には疲れていません。10歳のときに考えていた40歳の自分よりも全然OKです。




40歳になったら気持ちは30歳台よりもずいぶんと楽になってきました。仕事も経験を裏打ちにできるし、まわりもちょっとは見えるようになってきました。つまらない見得を張る必要もありません。そんな今、積極的に撮っているのは「東京」です。モノクロのスナップではなく、シノゴ(4×5インチ、葉書くらいの大きさのフィルム)を三脚に据えてカラーで撮っています。


「こんな東京知らないでしょ」とか「なつかしい東京」と言った類ものではなく、「皆が常に見ている東京」。雑誌「東京人」で撮っていたものがベースになっています。このサイトの中の「プロフィール」・「東京人」・「東京大観光」で一部見ることができます。


撮り始めて、あらためて東京の面白さ、美しさを再認識しています。ここ数年でパリやロンドン、NYを見て回りました。そして他の都市に比べ圧倒的に東京が大きいのを実感しました。


東京は「メガロポリス」です。東京の大きさは、内包しているものの多様性を表しています。雑多で猥雑で新と旧が交じり合い、奇妙なバランスを保っている。自分が住んでいる東京がこんなに面白いとは40歳で初めて気がつきました。


40歳になった今なら東京が撮れそうです。夏までには撮影を終え出版を目指します。東京に住む人はもとより、海外のいろんな人々に見てもらいたい。これが今年の目標です。




世界中が日本に注目し始めています。音楽やアート、ファッション。群発的に起こっているジャパンムーブメントが、サッカーワールドカップをきっかけに大きくなることでしょう。


でも日本の情報はまだまだ世界に伝わっていません。 特に東京のことは、興味を持つ人の多さに比べて情報がないに等しい。いまだに侍の国と思っています。


僕の撮っている東京が、リアルな東京の一端を伝えられる一助になればいいと思っています。




今年は、この撮影のことでたくさんの人に協力をお願いすることになるでしょう。


みなさん、どうぞよろしくお願いいたします。





2002年 1月1日  渡部さとる