vol.60:上海

行く前は中華三昧と思っていたのに、あにはからんや上海は不味かった。いや、口に合わなかった。


現地のコーディネーターが連れて行ってくれたのは、地元のお金持ちが好む高級料理店。我々以外は中国人のみ。


すっごく期待していたのに、出てくる料理出てくる料理「味がない」「油っぽい」「臭いがきつい」と今まで体験したことのない味ばかり。たとえば鶏のスープはバサッと一匹丸ごと鍋に沈んでいる。足も頭もそのまんま。多分これを魚のアラのようにしゃぶるんだろうが、スープをよそおうとしてお玉にゴロンと頭が乗っかってきた日には…

 


味はといえば、鶏以外なんの出汁も効いていない。一口すすると、あまりのくどさに喉がパタンと閉じてしまう。他の料理も油がきつくてスルリと喉を通らない。

極めつけは臭豆腐。もろに「うん○」の臭いがする。これは比喩ではない。非常にリアルな臭いだ。テーブルに運ばれるや、あまりの臭さに一斉にのけぞった。しかし、隣の現地人ご一行のテーブルに臭豆腐が運ばれると、彼らは嬌声をあげておいしそうに食べ始めるではないか。


辺りはすさまじい臭気につつまれ、食事どころではなくなった。あまりの臭いにゴホゴホとむせ返る。これが遊びで行ったのだったなら話の種に挑戦するところだが、いかんせん仕事である。豆腐ひとつで体調を崩すわけにはいかない。作った人には申し訳ないが早々に下げてもらった。調理人は作っていて平気なのだろうか?臭いが体についたら一週間くらい取れそうにないほどだ。


中国の山間部では発酵した食べ物を好むらしい。豆腐以外にも釣った魚をその場で土に埋めて腐らして、いや発酵させて食べるとか。とにかく臭いがきついものが喜ばれるそうだ。


日本にも納豆やクサヤ、沢庵などがあるし、カビの生えたチーズをありがたがる国もある。発酵食品の好みは様々、と頭では分かってはいたがこれはカルチャーショックだった。


一日目は笑っていたが二日目にも似たような料理が出ると(お店は変えたがやはり高級料理店だった)、楽しいはずの食事なのに皆押し黙ってしまった。諦めと憤りが表情ににじみ出ている。腹はすいているから箸をつけるのだがパクパク食べると言うよりはつまむ程度。腹にたまらない。チャーハンやソバの類も出てこない。唯一油ベタベタの焼きソバが出てきた。何度も言うがここは高級料理店である。ガード下の中華屋ではない。


三日目は日本食に逃げた。このまま中華を食べたら体調を崩しかねないからだ。四日目、店のランクをグッと落として中華に再挑戦。そこは麻婆豆腐が出てきたり炒飯があったり、なじみのある料理が多くようやく中華を楽しめた。


結局一番おいしかったのは、昼時に入った食堂で食べた小ロウポウとワンタンスープ。次々と箸が伸びあっというまに平らげてしまった。なにか店のランクが下がるほど日本人の口に合うようだ。現地の人に言われたのだが、麻婆豆腐や炒飯などは下級の料理だから客人に出すのは本当は失礼にあたるとのことだった。


パリでもロンドンでもNYでも中華を食べた。けれど本場上海の中華が一番口に合わないとはさすがに思いもよらなかった。


さて、来週からまた台湾、香港と中華が続く。まあ今度は大丈夫でしょう。




上海の中華料理ショックが大きすぎて今回は写真の話ではなくて料理の話になってしまった。コンパクトデジカメは絶好調。フィルムを使うカメラでは到底撮れない場面を次々と記録でき大満足。その話はいずれ詳しく書きます。




HPトップの告知にあるように写真展を開きます。皆さん宣伝してください。とても気持ちのいいギャラリーです。まだ準備が済んでいないのが若干不安ではありますが、今から4月26日が待ちどうしい思いです。是非写真展にお越しください。