vol.69:CP51

いつものように撮影帰りの堀内カラー。現像所内の掲示板前を通ると見慣れない書き込みが目に付いた。


「ラッキーカラープロセッサーCP51とラッキーモノクロ用45引き伸ばし機」


めずらしい。この掲示板には「アシスタント求む」だの「アシスタントします」といった求人関係やスタジオの情報が載ることはあっても、売ります買います系の書き込みはめったにない。しかも暗室用品が出ることは非常に稀だ。


CP51(http://www.fujimoto-photo.co.jp/Photo_EQ/CP51/CP51.HTM

というのは、カラーやモノクロの印画紙の自動現像機で、大全紙(新聞紙見開き)までのプリントが処理出来る。僕も暗室にはCP31という大四切(A3サイズ)までプリントできるものを2台持っていて、これでカラープリントを現像している。


CP31は定価40万円だがCP51になると80万円と倍に跳ね上がる。個人ユースで持つのはなかなか難しい値段だ。掲示板の書き込みを見て、「CP51が20万円以下だったら面白いな」と考えた。CP51があれば全紙でプリントして写真展が出来ると思ったのだ。


「ラッキーカラープロセッサーCP51とラッキーモノクロ用45引き伸ばし機」

の書き込みの下をたどると




















「差し上げます」














えっ、タダ?


80万円がタダ? 続けて第1ローラーの修理のみできちんと使えると書いてある。CPシリーズのローラーは消耗品のようなものだから驚くに値しない。すぐに横にいたアシスタントに連絡を取らせた。


電話すると、もう引き取りたいと申し出た人が二人もいて、我々は第3キープということだった。まあCPシリーズは人気商品。それをタダでということだからしょうがないとあきらめた。


ところが一週間後、アシスタントWの下に「前2人があきらめたから見に来て欲しい」と連絡が入った。Wは1人で見にでかけ、その場で引き取りを即決してきた。


見たところ結構きれいで、ちゃんと使えそうだと言うことだった。しかも驚いたことに無水洗乾燥モジュールまで付いているというのだ。このユニットをつければ現像後、乾燥した状態で機械から排出される。水洗、乾燥といったわずらわしい手間から開放されるのだ。ユニットのお値段、定価60万円也。


少々興奮気味になる。なにせ合わせて140万円がタダ!早速引き取りに伺った。


話しによると営業写真館で使っていたが、プリントを外注に出すことになって暗室を廃止。引き取って使ってくれるのなら譲りますということだった。CP51や引き伸ばし機のほかにも、無水洗モジュールに使う、イオン水精製機やカラーアナライザーまでいただき、ボルボの荷室一杯に詰めて暗室に戻った。




暗室に運び入れると、ちょっとだけ後悔した。やっぱり大きい。幅90センチ、奥行き140センチ。大きめのテーブルくらいのサイズだ。ただでさえせまっ苦しい暗室なのにますます身動きとれなくなってしまった。前の二人が断ったのもよーく理解できる。


しかも200ボルトでしか動かない。電気工事会社に連絡すると「ウーン、部屋見てみないとわかんないけど、どうだろうなー、無理かなー」


そ、そんなこと言わないで…(泣) もう後には引けないんだから。






イヤーな過去を思い出した。


昔バイクに乗っていた頃、知り合いのカメラマンからバイクのパーツを5万円分くらい譲り受けた。もらったシングルシートやステップ、ハンドルを取り付けたらヘッドライト回りを変えたくなった。ヘッドライト回りを変えたら今度はマフラーを変えたくなった。そしてそれはサスペンション、エンジンとエスカレートし、ワンルームマンションにバイクを運び入れ、原寸大プラモデルを作っているような生活を送る羽目になった。ついにはバイクの全塗装を発注。完全カスタムメイドバイクの一丁上がりである。


掛かった費用は全て合わせると、かるーく新車1台買えるお値段。しかし、そこまで手を入れたバイクだったが、素人改造ゆえカッコイイのだがあまりに乗りづらいものだった。窮屈なポジションに、やたらとフケはいいがトルク感のないエンジン。身体が痺れるような振動。バックミラーなど震えてなにも見えない。プラモデルは作り終えるまでが楽しい、ということにやっと気がついた。


1年後、乗るのをあきらめてナンバーをはずし駐車場に置いていたらあっさり盗まれた。でも全然悔しくなかった。むしろ「始末に困るものを持って行ってくれてありがとう」、という気持ちにさえなったのだ。まさか… CP51はそういうことにならないよね。




宣言します。来年は全紙のカラープリントで写真展やります。


200ボルトの工事が無事できたら…(泣)

(2002/06/29)