vol.79:WORKS 2001〜2002

ギャラリー「WORKS 2001〜02」へ


本棚の横に雑誌社から送られてきた掲載誌が山と積み上げられている。


前回整理をしたのがこのサイトを立ち上げる直前だったからもう1年半か。


以前はクリアファイルに1枚ずつ入れていたのだが、これだと数年も経つとかさばって場所をとってしまう。そこでスキャナーで読み込んで保存してみることにした。取り込みはめんどくさいが、保存したものをスライドショーなんかで見ているとなんだか面白い。


というわけで、仕事写真の抜粋をギャラリーに出してみます。基本的に2001〜02年のもの。普段何の仕事をしているか見てください。けっしてカメラを買っているだけではないのです。




Dir en grey写真集[××]

バンド、ディルアングレイの写真集。バツバツと読みます。B5判で448ページの辞書のような本。テキストは一切入っていません。頭から終わりまで全て写真で構成してあります。今年4月に彼らと「上海、香港、台北」を回って撮影しました。バンドの存在は知っていたものの、彼らとはまったく接点がなかったので、撮影依頼があったときは驚きました。ライブ演奏を聴いて2度びっくり。こんな音が出せるバンドがいたとは。ビジュアル系とくくられるのはもったいない気がする。現場ではファインピックス4500が大活躍。オフステージの写真では、素のままの彼らの写真を撮ることができた。デジカメのクオリティの高さにうなってしまった撮影でした。


Navi

車雑誌ナビ。写真集「午後の最後の日射し」が縁で仕事が始まった。車本体の撮影というより、車にからむ人物撮影がほとんど。IBM、ソニー、スバルなどのシリーズや、旧いベンツ、スポーツカーを楽しむ、犬と車などの特集。シノゴの使用率が結構高い。サイズが大判で、写真の印刷もとてもきれいな雑誌なのでうれしい。毎回、毎回編集者が違う車に乗ってくるのも楽しみ。


おとなぴあ

残念ながら休刊してしまった。映画や舞台の紹介のためのインタビューが主な記事。ページ数を贅沢に取り、デザインも美しく、カメラマンとして仕事をするのにとてもいい舞台だった。1年のあいだに、市川正親、山本寛斎、松本幸四郎、三國連太郎、美輪明宏、仲井戸麗市、浜田省吾、大沢在昌、桐野夏生、野村萬斎、喜多郎など各分野の濃い人たちの撮影ができて楽しかった。シノゴからハッセル、35ミリまでカラーネガ、ポジ、モノクロ、ポラロイド、とにかくいろいろ使いました。


おもいっきりテレビ

いわずと知れたお昼の番組の雑誌。なんだか凄い売れ行きらしい。おそらく今仕事をしている中で一番売れている雑誌。毎回日本テレビに行って大会議室にスタジオセットを作らなくてはならない。会議室を片付けるのが大変。あんだけスタジオがあんだから一つぐらい空けろ!と、いっつも思う。みのもんたがゲストを呼んでインタビューをするのだが、やっぱりうまいねー。撮影はとにかくスピードが要求される。1ポーズ2分くらい。ハッセルで撮影、ネガプリント。


文化出版書籍

毎年2冊くらい撮り続けている手芸書と呼ばれているジャンル。30、40ページくらいのグラビアと、後ろのほうに材料と作り方の手順が載っている。昨年発売した「スタイリッシュビーズジュエリー」が大ヒット。10刷りを重ねまだ売れている。去年一番売れたビーズの本になったらしい。知り合いも僕の撮影とは知らずに買って、撮影者の名前を見て驚いていた。結構ソンケーされてうれしい。今年、2冊目の「フェイバリットビーズジュエリー」発売。すべて35ミリ判でポジ、ほとんどを100ミリマクロで撮影。このレンズ、ビーズの仕事以外使ったためしはない。「ロープワーク」のほうは黒羽先生のシリーズで4作目。わざわざ熱海のスタジオまで行っている。高台にあって、光の回りがいいのだ。ハッセルと35ミリを使用。ストロボではなくて、連続点灯型のHMIというライトを使っている。


モーターマガジン

Naviの元編集長がライバル会社に電撃移籍。本人から連絡があってとっても驚いた。編集長との縁でNaviから引き続きモーターマガジンでも撮ることに。最初の依頼は人物ではなくてカーオーディオ5機種。ハッセルで自然光とHMIを使って撮影した。その翌月はホイール特集。扉絵は立体駐車場の屋上で、日没ギリギリの時間に撮っている。ブレた感じを出したかったので、ストロボではなくて、HMIライトを使用。ところで編集長はその後「ARIGATT」という食の雑誌にまたまた移籍。MMへはアドバイザーとして残るということだ。で、現在僕は「ARIGATT」でも仕事をしている。


ライカ通信

昨年NYに行った際にライカR7で撮った写真を、8ページに渡り掲載してもらった。以前、パリを撮った写真も載せてもらっている。「OOカメラ」と呼ばれる写真雑誌より版形が大きく、印刷もいい。ただし掲載の条件はライカを使っていること。なにせ「ライカ通信」だから。見開きの写真では、野球のボールまでがはっきりと見えて驚いた。さすがはコダクローム。11月25日発売の「ローライとハッセルの本」ではSWCで撮ったNYを9ページで掲載します。そのページだけ特別印刷のため、とてもよくディティールが出ている。オリジナルより出ているかも。


週刊文春

ヘネシーの広告では奥田瑛二、なかにし礼、大沢在昌、を都内のバーで。雰囲気を壊さないようにストロボは使わず、ちいさなタングステンライトで照明している。マミヤRB67の柔らかい描写のレンズを使い、感度400のポジフィルムを一絞り増感している。オメガでは、記念モデルの撮影のため、松本零士氏とイラストを合成。当初はセル画とスタジオでの人物撮影のCG合成という話しだったが、まだ僕がデジタルに不慣れだったのでプリント合成をすることにした。結果はデジタル合成より自然で、本人を始め、関係者からとてもよろこんでもらえた。合成の手間を語ったらコラム1本書けるくらいだ。合成時の劣化を防ぐため、情報量の多いシノゴを使いネガカラープリントした。


東京人

大特集と、インタビュー、それと小特集を毎年一度ずつくらい続けている。ほとんど東京のみでの販売なのだが、熱心な読者が多い。とても好きな雑誌で、10年前やらせて欲しいと売り込みに行った。同業者や編集者にもファンが多く、よく「このあいだの特集見ましたよ」と声をかけてもらえる。編集とデザインと執筆者とカメラマンのバランスがとてもよくとれている。大特集ともなるとシノゴから35ミリまで総動員して撮影にあたっている。


日経キャリアマガジン

編集者が渡部さん。カメラマンが渡部。僕のアシスタントが渡辺。取材に行くと最初の挨拶で「ワタナベです、ワタナベです、ワタナベです」と続き、必ず対象者が笑う。こうなれば是非ライターもワタナベさんを使って欲しい。佐々木投手やおちまさと、柔道の井上康生、それと若手社長の特集などを撮った。




そのほかにはムックの表紙や三菱商事の会社案内「フロンティアという仕事」、それに毎回楽しみな「母の友」の絵本作家を訪ねるシリーズなどがある。今年やった仕事がずっと続くかというと、三年後にはがらっと変わっていることが多い。来年はどんな仕事がくるか今の時点ではまるで分からない。だから仕事に飽きるということは全然ないのだ。

(2002/11/20)


Dir en grey写真集[××] メディアファクトリー刊 3500円